妄想ShortStory

えいじーさん作 妄想SS第4弾! モル━━━━(゚∀(  *  )━━━━!!!(最終更新 04/12/4)

"MANTIS" 第4話
文:えいじー


――その行為が「神の領域を侵し逆鱗に触れる行為」でも構わない。
  私自身が新たな神に成ればいいのだから。


アルデバラン特別アジト、PM7:16。
日の光の届かぬ実験室に、女の嬌声と獣のような唸り声が響く。
その様子を見下ろす別の女の部屋には、紙の上を走るペンの音だけが響いている。

「ふぅ……ん、……ぁ…はぁ……」

隠れる場所も逃げる場所もない、広く平坦な実験室の中。
女は法衣をはだけさせ、めくれたスリットの間から肉棒を挿し込まれ喘いでいる。
女を犯す男は外見こそ人間であったが、言葉を発する事もなく腰を動かし続ける様からは
人間らしい知性は見受けられない。

「――っ!う、んんっ……んっ!」

女を抱きかかえながら腰を振っていた男が、突然女を押し倒し腰の動きを速める。
背中を打って僅かに顔を歪ませた女は、しかし男には抵抗する事なく犯され続ける。

「はぁ、はぁ……いいわ…も、もう少し……」

女は喘ぎながら男を抱き寄せ、露出して揺れる乳房に男の顔を押し付ける。
鼻と口を塞がれ呼吸を荒げながら、男は絶頂に向けて更に腰を激しく動かす。


「――っ、そ、そうっ…ぁ、くる、くる――っくはぁぁ……んっ!!」

両手両脚で男と密着させたまま、女はぶるぶると身体を震わせる。
直後、男も女の膣内で達した。

「…ぁ、はぁ、っは……」

激しく痙攣する肉棒から精液が勢い良く精液を放たれるが、
男の陰茎を包む薄い膜が膣内に精子が侵入するのを防ぐ。
射精後に引き抜かれた肉棒はすぐに萎縮し、男の反応もなくなっていた。

肉棒から膜を取り去り、精液でベトベトになった肉棒を口に含んで綺麗にする。
そんな女の奉仕にも男の身体や陰茎は反応を見せない。


しばらくフェラチオを試みた後、女はモニタールームを見上げる。
二人の様子をモニタールームから見ていたクリエイターは、女と目が合うと目を閉じて首を横に振る。
それを確認し、女は名残惜しそうに立ち上がり乱れた法衣を整えた。



「どうだった?」

実験室から出た後、クリエイターに結果を尋ねるプリースト。

「生存時間63分35秒、射精回数3回。……一応、前より結果は良くなってる」

そう言いつつも不満の色を隠せないクリエイター。

「生存時間は延びたけど…生前の記憶が戻った様子はなかったわね」
「記憶どころか知能も獣ベースのホム並だし、責めのパターンも一辺倒だし……」
「それでコレが必要ってのはちょっと、ね」

精液の詰まった3袋の避妊膜を揺らしつつ、プリーストは苦笑する。

「元が人間だから、それを着けないまま膣内で射精されると妊娠しちゃうんだよね」
「そうね…これなら避妊の必要がないだけ、普通のホムの方が実用性がありそう」
「記憶と知能が復元されない限り、リバイヴは普通のホムと変わらないからねぇ……」

溜息をつき、クリエイターは男の死体を処分籠に放り込む。
男の耳には『Hu-69Ma』と書かれたタグが、
そして重なるように『Revive』と書かれたタグがつけられていた。


ホムンクルスと言ってもその形態は様々であり、学問的に大きく3種類に分類できると言われている。
エンブリオと呼ばれる生物細胞の練成物を培養し生み出される、狭義の「ホムンクルス」。
2種以上の生物を、それぞれの細胞を断片化する事なく合成する「キメラ」。
そして脳の残っている死体にエンブリオや人造器官を組み込む事で蘇生させる「リバイヴ」。

新たな生物として一から生まれ変わるホムンクルスや
合成元のいずれか、あるいは全てが生きた生物であるキメラに比べ、
一度死んだ生物の脳や器官を蘇生させるリバイヴは一般的に不安定で短命である。
特に人間の死体を生前の知能や記憶を持たせたまま蘇生させるリバイヴの研究は困難を極めた。
ジュノーでは「一度死んだ脳が再び生きる事を本能的に拒否する」という説が、
リバイヴの不安定な性質を化学的にも宗教的にも説明する説として広まっている。


クリエイターが国家から死刑直後の囚人の死体を貰い受け、リバイヴの研究を始めてから今回で9体目。
1体目は造成完了後まもなく死亡、2体目以降から異性に対する性的反応が確認されるものの、
生前の知能や記憶は例外なく失われていた。

生命工学の先進であるジュノーでも「机上の空論」とサジの投げられた理論だったが、
彼女は諦める事なくリバイヴの研究を続けている。
――あるひとつの目的を胸に秘めて。


「とりあえず、新しい死体が届くまでリバイヴの研究は一旦終了ね」
「そうだね」
「ケミはこれからどうする?……やっぱり、部屋に戻る?」
「うん」

微笑みながら即答する彼女を見て、プリーストは僅かに表情を曇らせる。
リバイヴの研究の後、クリエイターはいつも自分の部屋に戻り、しばらくの間出て来ない。
プリーストは彼女が部屋で何をしているのかを知っている。
彼女の部屋に何があるのかを知っている。
知っているからこそ、表情を曇らせる。

「何かあったら呼び出してね。それじゃあ!」

笑顔で階段を駆け上がる彼女に対し、プリーストは無言で見送る事しかできなかった。





アジトの2階に整然と並ぶカマキリ達の個室。
その一番奥にクリエイターの部屋がある。

研究に没頭する事が多いクリエイターは1日のほとんどをアジト奥の研究施設で過ごしており、
睡眠も個室ではなく研究所内の仮眠室で取ってしまう事が多い。
彼女が個室の扉を開く時は、リバイヴの研究を終えた後だけなのである。

鍵が外れ開かれた室内からツンとした薬品の匂いが溢れ出す。
部屋に入り明かりを灯し、すぐに扉を閉めてその匂いを閉じ込める。
そして錠を下ろし、クリエイターは部屋の奥へと歩き出す。

飾りも家具もない、棚の中に薬品の瓶だけが整然と並ぶ殺風景な室内。
その一番奥、行き止まりのようになっている棚をずらし、隠された入口を抜けて更に奥に進む。
浴槽のような構造になった小部屋の中央に、それは存在した。


青い液体で満たされたガラス製の棺。
その中に浮かぶ男性の肉体。


「ただいま、ミシェル」

寂しさを笑みの中に隠し、彼女は語りかけた。

「…久しぶりだね、寂しかった?」

棺の蓋を開け、男の身体を液体から引き上げるクリエイター。
粘性を保ちながら垂れ落ちた液体が排水溝へと吸い込まれていく。

「今、綺麗にしてあげるからね」

手袋と靴下を脱ぎ、隅にある棚に積まれたタオルで男の身体を拭き取る。

「息ができなくて苦しかったよね。だけど、この液体の中にいないと
 身体が腐って消えちゃうから……ごめんね」

最初は顔と頭を拭い、髪の毛を整える。
そして両肩から両腕へ、次に胴体へ、両脚へ。
身体を滴るコーティング薬や皮膚に塗られた硫化水銀が、少しずつタオルに染み込んでいく。

「…ここも、綺麗にしなくちゃね」

タオルを取り替え、彼女の手は男の下腹部へと伸びる。
尻の穴を拭い、包み込むように陰茎を丹念に拭いていく。

「……。」

全身を拭き終えた男の身体を眺めた後、
クリエイターは男の股間に顔を埋めるようにうつ伏せる。
そして陰茎を素手で掴み、口の中に含んだ。


「…ん……む…」

全く勃起していない、指よりも柔らかい男の陰茎を頬張り、舌で転がすように愛撫する。
唇の圧力で柔らかい感触を楽しみながら亀頭をチロチロと舐め上げ、
そのまま、皮を引っ張るように吸い上げる。

「ぁむ……どう、ミシェル…ん……わたし、巧くなった……?」

彼女の執拗な奉仕にも、男の身体は全く反応しない。
構わず、彼女は肉棒をしゃぶり続ける。
左手は淫嚢を刺激し、右手は自らのスカートの中へ。

「ん……ミシェルとエッチする時に困らないように…ホム相手にいっぱい練習したんだよ……」

言いながら絶え間なく動く右手は、自身の秘所ではなくアヌスを一心に刺激し続けている。
秘所には触れられていない……いや、触れる事ができない。


「……っう、だめ…もう我慢できない……」

一旦陰茎を解放して離れると、彼女は棚の上に置いてあった小さな鍵を手に取る。
そしてスカートをまくり、震える手で鍵を差し込む。

――彼女の秘部に取り付けられた、金属製の貞操帯に。





カランという音と共に貞操帯が落ち、悌毛された彼女の陰部が露わになる。
同時に彼女は右手で胸部のプレートを外し、小振りな胸も晒していた。

「見て…ミシェル。わたし、まだ処女なんだよ……」

男の胸の上に跨った彼女は、左手でスカートをまくりひくつく陰部を見せつける。

「お尻の穴はホムに何回か犯されちゃったけど…こっちの穴は、大事に守ってるんだよ……?」

男の胸に陰部を押し付けながら、右手で突起した自分の乳首を弄り、息を荒くしていく。


「はぁ…はぁ……ミシェルの…入れたいよ……わたしの初めて、ミシェルにあげたいよ……」

切なげな声を漏らしながら腰をスライドさせた彼女は、
男の下腹部に自分の陰部を押し当て、右手で男の陰茎を自分の膣口に導く。

…しかし、血の通わない陰茎はわずかな抵抗で曲がり、彼女を貫く事はできない。
何度試みても、彼女の願いは叶わない。


「ミシェル……生き返ってよ……生き返って、わたしを犯してよぉ……っ!!」

――構わず、彼女は腰を激しく揺すり始めた。
男の上に身を預け、首筋に両腕を回して抱きつきながら。
大きく開いた股を上下に動かし、柔らかい陰茎に秘所を強く擦り合わせる。

「…ぁく……っ!ん、んんっ……ぅ…!」

体重がかけられた秘唇は陰茎の形に沿うようにぱくりと開き、
中から滴り落ちる愛液によって陰茎がいやらしく塗り潰されていく。
愛液にまみれた陰茎は彼女の秘唇が往復するたびに踊り、逃れるように形を変える。

彼女が目を閉じ、腰のストロークを大きくし始めた時。
暴れる亀頭が秘唇のくぼみに埋まり、淫核を弾くように彼女の下腹部を撫でた。

「ひぁ――っ!?」

ぶるりと身体を震わせ、彼女の動きが一瞬だけ止まる。

「…っ、はぁ……ぁ…」

息を荒げながら、腰の位置を微調整して秘唇を陰茎にあてがう。
そしてもう一度、今と同じ間隔で思い切り腰を動かす。

「っうぅ……っ!…っ、いい……もっと……もっとぉ…」

男の身体を抱き締めながら、陰茎を淫核の上に何度もあてがい、そして何度も弾く。
数回繰り返したところで焦れてきたのか、彼女は再び速く細かく腰を前後し始めた。

「っ、はぁ……っ!…ミシェル……ミシェル……っ!」

押し付けるように密着させていた小さな胸を離し、代わりに唇を唇に押し付ける。
歯の表面を、唇の裏を舌で味わうように撫でて、息吹を吹き込むように深く吸い付く。
そうする間も腰の動きは、彼女の昂揚は止まらない。

「……っ、はぁ、ミシェ…ル、わたし…もう……もう……っ!」

二人の下腹部は既に愛液で染まり、腰が前後するたびにグシュグシュと淫らな水音をたてていた。
その愛液をさらに塗りつけるように、彼女は腰を大きく、激しく動かす。

「はぁっ、ぁ――ミシェル、だめ、ミシェル……っ!」

男にしがみつき、名前を何度も呼びながら腰を揺すり続ける彼女。

――その動きがびくりと震え、止まった。

「――っく、ぅうう……――っ!!」

がくがくと全身を震わせ、膣奥と脳髄の間を駆け抜ける快楽に息を殺して耐える。
長い絶頂の中、彼女は股間を震わせながら男を抱き締め続けた。


「…はぁ……はぁ……」

快楽の波が収まった後、ぐったりと男の身体に身を預け余韻を味わう。
彼女の身体が擦り合い愛液が塗りつけられた後も、男の身体は冬の窓のように冷たい。

「……ミシェル…」

その冷たさが火照る身体に気持ち良くて。
彼女は身体を預けたまま、浅い眠りに落ちた。





「――ミシェル!どうして…!?……返事してよ…ミシェル!!」

当時、彼女はまだ商人だった。
頭が良く手先も器用だった彼女は、恋人の剣士の為に武器を造る鍛冶屋を目指していた。

彼女が転職試験を受ける前日、剣士がミョルニール山脈に赴いたまま消息が途絶える。
数日後、剣士は崖崩れの現場の側で遺体として発見された。
彼の手には数枚の青ハーブと、彼女が欲しがっていた幻想の花が握られていたという。


「なんで…?どうして、ミシェルは生き返らないの!?」

絶叫にも似た彼女の問いが大聖堂に響く。
剣士の死体を前に、司祭は黙って首を振る。

神がリザレクションの祈りを聞き入れて蘇らせる骸は、
魔物の手によって不条理に殺められた骸のみ。
老衰や病気による死者、不慮の事故により死んだ者、人や獣に殺された者――
それらは全て世界の規律の元で天寿を全うしたと見なされ、二度と蘇らない。
それが彼女の受けた説明であった。

「……信じない。あんたの言う事も、そんなケチな神様も、全部信じない!!」


葬式の直前、剣士の遺体は何者かによって持ち去られる。
同時に、彼女の姿も消えていた。


以前笑い話として聞いた事があった、ジュノーで行われているという人体蘇生の研究。
その噂に賭け、彼女は死体を積んだカートを引いてジュノーを目指す。

「――商人さん、そんな重いカートを引いてちゃ国境は越えられないわよ」

国境を目前とした時計塔の街。
そこで彼女は妖艶な雰囲気を湛えた司祭の女性に出会う。
――彼女の人生が大きな転機を迎えた瞬間であった。

死体は防腐処理をして匿われ、彼女はジュノーに送られてアルケミストに転職。
そして彼女は司祭に導かれ、カマキリの一部となったのである。


恋人が死亡してからおよそ4ヶ月。
研究施設を得た彼女はホムンクルスの研究を確立し、その理論を礎にリバイヴの実験も積み重ねた。
結果、彼女が望む「彼との交わり」が物理的には実現可能な位置に辿り付いた。

しかし、まだ足りない。
記憶と知能が復元されない限り、リバイヴは普通のホムンクルスと変わりない。
記憶が戻らぬ恋人に愛されても、それは普通のホムンクルスに犯されるのと何ら変わりない。

そして、時間が足りない。
いくら完璧な防腐処理を施しても、少しずつ、本当に少しずつだが腐食は進む。
そして理論上、腐食しきった脳からは知能と記憶が完全に消えると言われている。
恋人の「完全な死」が訪れる前に理論を完成させる……それが、彼女の最終目的。


目的達成の為に、彼女はいかなる犠牲も構わない。
生物や死体を刻み、肉片を混ぜる過程も厭わない。
神の意志に、世界の規律に反する行為を恐れない。


「――人の痛みもわからない神様なんて、もう二度と信じない。
 あたし自身が、不幸な人を蘇らせて幸せに導く神様になってみせる――」


アルケミストに転職した時、心の中で叫んだ誓いの言葉。
その言葉とサイレンの音が夢の空洞に響き、彼女は浅い眠りから目覚めた。

誓いの言葉は心の中に消え、サイレンの音だけが彼女の耳に響き続ける。
――アジト内の異変を伝える、警報のサイレンの音だった。

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