"MANTIS" 第14話 文:えいじー ――度を越えた尊敬は愛情へと変わる。 そして、度を越えた愛情は狂想へと変わる。 エルメスプレート、PM9:40。 空洞の奥深くで眠る女の意識に、彼女自身の悲痛な叫びが響く。 「父さん…父…さん……っ!!」 彼女がまだノービスとして修行を積む事もできぬ少女だった頃。 隣国シュバルツバルトとの紛争が激化する中、彼女の父は国境警備兵として国に仕えていた。 最前線へ赴く兵と比べれば危険も少ない。 時間はかかるが自ら会いに行く事もできる…彼女はそう楽観していた。 だが、自分の目の前で父が戦死する可能性までは考慮していなかった。 国境都市アルデバラン。 その北門で待っていた父に駆け寄り、 故郷の土産を渡そうとした彼女の視界が赤く、そして黒く染まる。 以後数分の記憶は彼女にはない。 気付けば、敵の斥侯の骸を囲む警備兵達が辺りを慌しく歩き回っており、 自分は血まみれの手で父の首を抱きしめていた。 意識が暗転し、場面が変わる。 彼女はアコライトとして修行に励んでおり、 傍らには父が死んで間もなく産まれた弟の姿もあった。 「姉さんは戦争で傷ついた人を助ける為にプリーストを目指すんだよね。 僕も姉さんと一緒に頑張るよ!」 まだノービスだった弟が無邪気に話していた記憶がある。 最初は、彼女も彼と同じように考えていた。 しかし戦死した兵を弔っていくうち、その理想に限界を感じ始めた。 いくら傷を癒しても、人が戦地へ赴く限り負傷する者は後を絶たない。 プリーストが起こす奇跡を持ってしても、戦争で死んだ者を蘇らせる事はできない。 そして全ての原因である戦争も、自分一人の力では止める事などできない。 そこまで悟った彼女がひとつの理想を抱いた時、彼女はアコライトになった事を激しく後悔する。 ――「癒す」事は出来ても、「造る」事は出来ないから。 だが、彼女は諦めていなかった。 自分の力で直接理想を叶える事は出来なくても、理想を叶える組織を作る事は出来る。 「人間の代わりに戦地へ赴く存在を生み出せば……戦争で兵が死なずに済む」 意識の天井に、彼女が胸の内に秘め続けていた理想の言葉が響く。 次の瞬間、頬への甘い感触と共に彼女の意識は覚醒した。 ・ 「――ただいま、姉さん」 夢の中と同じ無邪気な笑みを浮かべ、ハイプリーストが語りかける。 プリーストは意に介せぬ様子で起き上がり、ベッドの周りを歩きながら辺りを見回した。 悪趣味なほど豪勢な室内。 明かりはここが地下室である事を忘れそうになる程に照らされており、 唯一の出口は既にハイプリーストの手によって内側からも施錠されている。 そこまで確認し、自分自身を見回す。 着慣れた法衣を取り上げられ、強制的に着せられた女性ハイプリースト用の法衣。 その着心地の悪さに溜息をつくと、そこで初めてハイプリーストの方へ顔を向けた。 「良く似合ってるよ」 「捕まった以上はどんな事をされても仕方ないと思ってたけど…… ここまで非道い事をされるとは思わなかったわ」 法衣の襟元を引っ張り、プリーストは自嘲気味に笑う。 ハイプリーストも苦笑混じりに微笑むと、プリーストと同じ様に辺りを見回す。 机上にはランプや小物が整然と並べられており、室内の戸棚が開けられた形跡もない。 「もう室内の捜索はやめたのかい?」 「ええ。考えてみたら、貴方が私の為に青ジェムを置き忘れてくれるほど頭が悪いとは思えないわ」 「その通りだね」 笑いながら食事をテーブルに置き、側の椅子に座るハイプリースト。 彼に促され、プリーストも対面に置かれた椅子に腰掛けた。 「姉さんの身代わりは明後日処刑されるそうだよ」 「ふぅん…そこまで偽者だと気付かれないなんて、余程ケミの造ったホムが私にそっくりだったのね」 「いや、サキュバスをベースにしているだけあってスタイルは良かったけど…顔は全然似ていない。 遠目ならともかく、近くで注意深く見られれば見破られてもおかしくなかった」 「それじゃ、伯爵は普段から私の身体しか見ていなかったって事ね」 くつろいだ様子で笑うプリーストだったが、ハイプリーストが食事を勧めるとその表情を険しくする。 「――まず、貴方が食べて」 「…まいったな、まだ信用されてないのか」 「当たり前でしょ?自分を捕えた相手の施しを数日で信頼するほど愚かじゃないわ」 小さく肩をすくめ、彼女に差し出した食事を毒見するハイプリースト。 コーヒーをよくかき混ぜて一口、そしてスープも同じように一口。 彼の様子に異変がないのを確認すると、プリーストも椅子に腰掛け食事に手をつけた。 「…それにしても」 スープをすくい取りながら、プリーストが口を開く。 「何故、そんな面倒な真似をしてまで私を生かしたの?」 彼女の問いに対し、ハイプリーストは驚きと呆れ混じりに即答する。 「弟が姉を救おうとするのがそんなに不思議かい?」 その返答に対し、今度はプリーストが呆れながら答える。 「そもそも、弟が姉を襲撃して捕える事が不思議ね」 当然とも言える意見に、ハイプリーストは何か言おうとした口をつぐむ。 そのまま、プリーストがスープを全て飲み終えるまで沈黙は続いた。 「……まあ、そんな事はもうどうでもいいわ」 空になった皿を置き、プリーストが沈黙を破る。 「私がどうなろうとどうでもいいの。貴方が私の理想を受け継いでさえしてくれればね」 「理想…?」 「アコライト時代に抱いた理想よ」 意識の中に響いた言葉を思い出し、プリーストは静かに瞳を閉じる。 ハイプリーストはしばらく当時の事を振り返った後、思い出したように表情を明るくした。 「それなら、僕がハイプリーストになった事で既に達成されてるじゃないか。 負傷した兵の傷を癒す事もできるし、兵を護る術も使う事ができる」 「――やっぱり、何もわかってなかったのね」 プリーストは寂しそうにつぶやき、コーヒーが半分ほど残ったカップを手に取る。 そして一気に飲み干すと、椅子から立ち上がりながら早口でまくしたてた。 「重要なのは貴方や私の力じゃない、ケミの力なのよ! 私の真似事のままでいい、ホムの技術を進化させて――」 言葉が、表情が止まる。 彼女の手からカップが滑り落ち、音を立てて砕ける。 同様に崩れ落ちそうになった彼女は、寸前のところで堪えながら苦しそうに呻いた。 「な――に?」 目の前の男が歪んだ笑みを浮かべている。 自分の異変が確立されていたかのような会心の笑み。 異変の原因は――彼。 だが、何故。 何故先に食べたはずの彼に異変が起きない。 解毒のスキルを使用した素振りも―― 「……まさ、か」 うかつだった。 自分の職のスキルを見落としてたなんて。 「そう、そのまさかさ。…さすがの姉さんでも、スローポイズンなんてスキルは想定外だったかい?」 「…あらかじめそのスキルを使って……毒が入った、食事を自ら、食べて……――っ!!」 突如、プリーストの身体がビクンと跳ねる。 テーブルに両手をついたまま身体を震わせる度、彼女の顔が紅潮していく。 「正確には毒じゃない、モンスターを使役する際に用いられる覚醒剤さ。 最も、人間にとっては毒になるくらい催淫作用が強いのかもしれないけどね」 「…は、ぁ……やっぱり、貴方なんかじゃ、私の、理想は……っあぁぁぁ……っ!!」 テーブルの上にうつ伏せ、苦しそうに息を吐くプリースト。 彼女の身体を無遠慮に抱き寄せると、ハイプリーストはベッドへと彼女を引きずる。 「あまり喋らない方がいい。大人しくして……僕に全てを任せてくれ」 「く……ふざけないで…あなたなんかに、好きにされて……」 彼女の抵抗を無視し、ハイプリーストはそのまま彼女を押し倒した。 ・ 柔らかなベッドが二人分の体重によって沈み、ぎしりと軋んだ音を立てる。 押し倒されたプリーストはシーツを振り乱しながら懸命にもがくが、 身体中に浸透した媚薬が彼女の動きを封じていく。 「…やめなさい……っ!!」 辛うじて保たれた意識で強く叱咤するプリーストだが、ハイプリーストは聞く耳を持たない。 彼女を押さえつけたままベッドの中央まで身体を寄せ、強引に法衣を脱がそうとする。 「女一人抱くのに、こんな卑怯な手段をとって…恥ずかしくないの……!?」 ハイプリーストは聞く耳を持たず、目の前の行為に集中する。 やがて法衣がはだけ彼女の片胸が露わになると、ハイプリーストは獣のようにその先端にむしゃぶりついた。 「――くぅぅっ!!」 普段よりも強烈な快楽に襲われ、プリーストの抵抗が一瞬緩む。 その隙を見計らい両胸を完全にはだけさせると、ハイプリーストはその谷間に顔を埋めた。 「…はぁ、はぁ……姉さんの胸……小さい頃見た時より、ずっと大きくて綺麗だよ……」 彼女が逃げられぬよう両肩をしっかりと押さえながら、 美しく豊満な両胸を愛でるように舌を這い回らせていくハイプリースト。 その腹部が彼女の下腹部に当たっている事に気付くと、 接点が擦りあうように身体を小刻みに動かした。 「…く、ぁ……やめ、なさ……い…」 胸部への執拗な愛撫と下腹部のかすかな摩擦に翻弄され、彼女の声が弱々しくなっていく。 それを見て両肩を押さえる手を離したハイプリーストは、 空いた両手でじっくりと彼女の両胸を揉み始める。 その間も舌は先端をリズミカルに刺激し続けた。 「…ぁ……ふぁ…」 やがて媚薬が完全に浸透したのか、プリーストは肢体を細かく震わせながら ハイプリーストの愛撫に身を任せるのみとなっていた。 その様子に満足し、すっかり固くなった乳首から口を離すハイプリースト。 彼が下腹部に身体をずらす為一旦離れても、プリーストは逃げようとしない。 下腹部に辿り付いた彼が前掛けを一息にめくり上げても。 そして尻を持ち上げながらゆっくりとショーツを下ろしても、逃げようとしない。 ――もはや、逃げる気力をもたない。 かくして彼女のショーツを完全に取り去ったハイプリーストは、 媚薬と愛撫によって愛液を溢れさせた実姉の陰部を目の当たりにし、感嘆の溜息を漏らした。 「…素敵だ……」 荒く息を吐きながら、ハイプリーストは法衣を脱いで自らの陰部も曝け出す。 露わになったそれはすぐにも射精してしまいそうな程張り詰め、激しく脈打っていた。 「はぁ、はぁ…いくよ、姉さん……」 膝裏を掴んで彼女の両脚を広げ、根元の茂みに怒張を押し当てる。 そして何度か擦り合わせて挿入口を探し当てると、ゆっくりと先端を埋めていく。 「…姉さん……姉さん……っ!!」 うわ言のように叫びながら、ハイプリーストは腰を前に進めた。 ・ 「ん、あぁ……っ!!」 より強い快楽を膣内に叩きつけられ、プリーストの意識が僅かに引き戻される。 熱く包み込む膣壁の感触に欲望が暴発しそうになるのを懸命に堪えながら、 ハイプリーストは最奥へと腰を進めていった。 「く、ぅ……やっとひとつになれたね、姉さん……」 恍惚とした表情を浮かべていたハイプリーストだったが、 抽挿を始めようと腰を引いたところでその表情を曇らせる。 「……?姉さん…痛くないのかい?」 結合部を見つめながら2、3度腰を動かすハイプリーストだったが、 陰茎には愛液だけがまとわりつき、彼女の秘部から破瓜の血は流れない。 自身が思い描いていたのとは違うその光景を前に、ハイプリーストの表情が困惑に歪んだ。 「…なんで、姉さん、どうして、他の男に汚されているんだ……? 僕は姉さんの為に純潔を守り続けたのに……!」 刺激が止まり意識を取り戻したプリーストは、狼狽するハイプリーストを睨みつけながら言い放った。 「馬鹿にしないで…なんで貴方の為に、処女で居続けなければならないのよ……?」 彼女の言葉を聞き、ハイプリーストの動きが止まる。 そして、彼女の両肩を押さえながら笑い出す。 「…く、くく……いいよ、姉さん。過去の事は気にしなくていい。 これから僕が、過去に犯された男の事を忘れるくらい愛してあげるからね……?」 ハイプリーストの歪んだ笑顔を見上げ、プリーストの表情が初めて僅かな困惑に歪む。 「ふ…ふざけないで……――っあぁぁっ!!」 有無を言わさず、激しく腰を動かし始めるハイプリースト。 淫らな水音と最奥に響く衝撃が、プリーストの意識を再び霞ませていく。 挿入時に既に限界まで高められていたハイプリーストは、 自制を解く事であっさりと最初の絶頂を迎えた。 「く、出るっ!」 「――っ!?だめ、やめ……っ!!」 彼女の抵抗を跳ね除け、ハイプリーストは根元まで突き入れたままガクリと腰を震わせる。 次の瞬間、弾けるような勢いの一射目が彼女の最奥を打ち付け、 続いて二度、三度と脈打つ陰茎の動きに合わせて大量の精液が彼女の中に吐き出された。 「…ば、馬鹿……実の姉を…妊娠させるつもり……?」 射精が終わった後も肢体を震わせ続ける彼女に対し、 ハイプリーストは萎えかけの怒張を挿し込んだままゆっくりと前後させる。 「くく、それも悪くないね……何なら、もっと注ぎ込んであげるよ」 「…くぁ……や、やめなさい……っ」 陰茎が再び膨張し始めたのに合わせ、抽挿の速度を段々と速めていくハイプリースト。 衝撃でたぷたぷと揺れる乳房を眺めながら、腰をしっかりと掴んで彼女を犯す。 「あ、あぁ…っ、いいよ、姉さん、気持ちいい……」 それまで見聞でしか性行為を知らなかったハイプリーストは、 初めて味わうその快楽に没頭し、様々なやり方で彼女の膣壁の感触を楽しむ。 獣のように激しく突いてみたり、膣口までゆっくりと引き抜いた後一気に最奥まで叩きつけてみたり、 根元まで埋めたまま淫核や乳首を責め、竿全体を締め付けさせてみたり。 身勝手な抽挿に対し苦しそうに呻くプリーストだったが、ハイプリーストは構う事なく腰を動かし続ける。 やがて一通りの抽挿を試し終えると、ニ度目の性交を締めくくる為に激しく単調な抽挿に戻る。 様々な抽挿によって充分に高まっていたハイプリーストは、すぐに彼女の膣内で精液を暴発させた。 「――やあぁぁ……っ!!」 もはやプリーストは悲鳴をあげながら精を受け続ける事しかできない。 彼女を押さえつけながら射精を終えたハイプリーストは、 息つく間もなく彼女の胸を弄び、陰茎が再び固さを取り戻すのを待った。 「まだ終わらないよ、姉さん……」 「だ、だめ……これ以上出されたら本当に……っんうぅ――っ!!」 愛液と精液でドロドロになった膣内を膨張した陰茎が押し広げ、隙間を埋めていく。 ハイプリーストは彼女に覆い被さり、三度目の絶頂に向けて腰の動きを再開した。 「そろそろ僕にも毒が効いてきたみたいだ…このまま何度でも出せそうだよ」 その言葉に動揺と怯えの表情を浮かべるプリーストだが、 もはや圧し掛かるハイプリーストの体重を押し返す力も残されていない。 必死に保ち続けていた自制心も、下腹部に溜まった熱い粘液の感触によって次第に溶かされていく。 「――っく、また、出るよ、姉さん……っ!!」 彼女の唇を奪いながら、深々と挿し込んだ陰茎をビクビクと震わせるハイプリースト。 子宮口にぴったりと当たった先端から白濁が勢いよく迸り、 既に精液の溜まっている子宮内へ直接流し込まれていく。 「…駄目……だめぇ……」 うわ言のように拒み続ける彼女に構わず、ハイプリーストは射精の間も絶えず腰を動かす。 誰にも邪魔されぬ密室の中、ハイプリーストは生まれてから溜め続けていた欲望を 欲望の対象であった彼女に向けて何度も吐き出した。 ・ どれだけ、時間が経っただろうか。 室内はむせかえるほどの雄と雌の匂いで充満し、プリーストの身体は秘所のみならず、 両胸や口の周り、顔や髪の毛までもが白濁にまみれていた。 「……ふぅ」 陵辱を小休止していたハイプリーストは、脱ぎ捨てられていた自分の法衣から媚薬の入った小瓶を取り出す。 そしてベッドまで戻ると、放心したままでいる彼女の蜜壷に向けて小瓶を傾けた。 膣内を満たす二種類の体液の上に媚薬がぽたぽたと落ち、ゆっくりと混ざっていく。 「…姉さんみたいになりたいとずっと思ってた。 姉さんに勝ちたい、姉さんに認められたいとずっと思ってた……」 粘膜に媚薬を染み込まされ、小さく喘ぎながら身をよじらせる彼女。 ハイプリーストはその股を開かせ、より深く媚薬を馴染ませようと膨張した陰茎をあてがう。 「上位二次職への到達速度で勝ち、組織の運営でも勝った。 そして――これで完全に僕の勝ちだ」 ゆっくりと、膣内に陰茎を挿し込んでいく。 媚薬を掻き混ぜながら進む雁首の先が子宮口まで到達した瞬間、彼女の身体が大きく跳ねた。 「これからは僕が面倒を見てあげる。ずっと一緒だよ、姉さん……」 優しく語りかけながら、ハイプリーストは彼女を犯し続けた。 |