"MANTIS" 第16話 文:えいじー ――逆転の切り札は決定打には成り得ない。 切り札を握っているのは相手も同じだから。 エルメスプレート、PM0:06。 空洞の奥深くに造られた広間に、淫猥な水音が響く。 「…っあ、ぁ……」 人間型ホムンクルスに羽交い絞めにされた皇騎士は、 前から同じ型のホムンクルスに激しく犯され苦しげな嬌声をあげる。 やがてホムンクルスが根元まで挿し込んだ陰茎をビクリと震わせると、 彼女は荒く息を吐きながら小さく脚を震わせた。 後方の扉が固く閉ざされた広間には十数体のホムンクルスの死体が転がり、皇騎士の奮闘を物語っている。 そして広間の隅に転がる大剣が、ホムンクルス達の最終的な勝利を物語っている。 捕えられ羽交い絞めにされた彼女の鎧や足甲は着けられたままであり、 ショーツのみを脱がされスカートと前掛けが捲られた状態で 何体ものホムンクルスに肉棒を挿し込まれ、精液を注ぎ込まれていた。 「次」 膝が曲がり崩れ落ちそうになる彼女を抱え上げながら、羽交い絞めにしているホムンクルスが首で促す。 肉棒が引き抜かれ白濁にまみれた秘所がスカートに隠されるが、 すぐに別のホムンクルスが垂れ下がったスカートを捲り上げ、膨張した陰茎を深々と挿し込む。 「く――ぅ!」 ビクンと震える彼女に構わず、ホムンクルスは尻を掴みながら腰を激しく動かす。 その動きに彼女をいたわる意思はもちろん、性交を楽しむ意思すらも感じられない。 目の前の挿入口に陰茎を挿し込み、精液を吐き出す為だけに抽挿を行っている。 「ぅ、く、っん……――っうぅ……っ!!」 程なく絶頂を迎えたホムンクルスは、抵抗する彼女の最奥を白濁で満たす。 まるで排泄行為を行うように性交と射精を終えたホムンクルスは、 余韻を楽しみもせずすぐに陰茎を引き抜いた。 「これで全員終わったな」 羽交い絞めにしていたホムンクルスはそう言い放つと、力無くうなだれる皇騎士を床に引き倒す。 そして陵辱の二周目を始める為に後ろから覆い被さる。 「っ、っく――!」 乱暴に倒された身体を懸命に起こそうとする皇騎士だったが、 一瞬だけ自由を得た身体はすぐに別のホムンクルスによって取り押さえられる。 そのまま四つん這いの体勢にさせられた彼女は、最初に犯されたホムンクルスに再び根元まで突き挿れられた。 ・ 「様子はどうだ」 広間の上段から沈痛な表情で陵辱を見ていたクリエイターの元に、 プリーストを連れたハイプリーストの姿が現れる。 赤い法衣を纏ったプリーストの表情は虚ろで、その自我は認められない。 「……見ての通りよ」 「あんな余興はどうでもいい。戦闘テストの結果はどうだったかと聞いている」 言い放ちながら陵辱を見下ろすハイプリーストを憎々しげに見つめると、 クリエイターは手にした書類を淡々と読み上げた。 「1対1から5対1の戦闘は全てホムンクルス側の全滅。 戦闘時間はそれぞれ24秒、59秒、2分5秒、2分48秒、3分37秒。 6対1の戦闘の結果、2体の被害の末にホムンクルス側が勝利。戦闘時間2分15秒……以上よ」 「前回と大して変わらないな。あの性欲を戦闘能力に回せないのか?」 「あれはホムンクルス特有の性質よ。無茶言わないで」 「君の作るホムンクルス特有の、だろ?」 苦笑しつつ、備え付けられたソファーにプリーストを座らせるハイプリースト。 その言葉に対し、クリエイターは肯定も否定もせずに口をつぐんだ。 「我々の造っていたホムンクルスに比べ判断力や連携能力は向上しているが…… 恐らくあの無駄な性質は、君がそういう目的のホムンクルスを造り続けた弊害なのだろうな」 「……。」 「まあ、時間をかけて改善してくれれば構わないさ」 広間ではいまだ一人目のホムンクルスが皇騎士を犯していた。 一度精液を吐き出した為か、二度目の陵辱はより長く、執拗に続いている。 その様子をしばらく眺めていたハイプリーストは、やがてプリーストの座るソファーへと振り返った。 「…さて、私も余興に付き合うとしようか」 小さく笑いながらプリーストの元へと近づくハイプリースト。 彼の目的を察し、クリエイターは視線を伏せながら彼の元を離れた。 ・ 「…っあ……っ」 口付けながら片胸を圧迫するハイプリーストの愛撫に対し、プリーストは小さく声をあげる。 ハイプリーストが右手を動かすたび、彼女の胸はその形を自在に変えていく。 左手は彼女の身体のラインをゆっくりとなぞり、やがて下腹部へと辿り付いた。 「ほら、姉さん」 彼女を促して股を開かせ、前掛けを捲り上げるハイプリースト。 そして下着も着けず露わとなっている秘部を何度か撫でると、そのまま指を膣内へと滑り込ませた。 「ひぅ…っ!」 短く洩れるプリーストの悲鳴。 その声に気付き、階下で犯されていた皇騎士がハイプリースト達のいる上段を見上げる。 「マスター……っ!!」 崇拝とも呼べる忠義を抱いている自分のマスターが、普段とはかけ離れた姿を晒している。 その様子は、皇騎士にとって自分が犯される以上の屈辱であった。 「マスター!正気に戻って下さい、マスター!」 羽交い絞めにされた身体を懸命に動かしながら叫ぶ皇騎士だが、プリーストにその声が届く様子はない。 小さく嬌声をあげながら、前方の空間に虚ろな視線を泳がせるのみである。 「ふん」 皇騎士の悲痛な呼びかけに気付いたハイプリーストは、失笑しながらプリーストを犯していた指を引き抜く。 そしてプリーストの法衣を乱暴に脱がすと、ソファーから立たせ階下の見渡せる階段の近くへと連れ出した。 「これで良く見えるだろう」 言いながら手すりに手をつかせ、突き出させたプリーストの尻を背後から抱えるハイプリースト。 露出した胸を気にせずハイプリーストの沙汰を待つプリーストの淫らな姿が、 手すり越しに階下にいる皇騎士の視界に映し出される。 「だめ、マスター…逃げて、ください……っ!!」 背後から貫かれる自らの状態に構わず、必死で呼びかける皇騎士。 その様子をあざ笑うかのようにハイプリーストは歪んだ愛に満ちた肉棒を取り出し、 程よく濡れたプリーストの陰部にあてがい――そして、一気に突き挿した。 「っはぁぁ――んっ!」 手すりに掴まったままビクンと跳ねるプリーストの肢体。 彼女が貫かれた事を察し、皇騎士は悲壮な表情でうなだれる。 「嬉しいだろう?お前の慕う『元』マスターも、こうしてお前と同じように愛されているのだぞ」 笑いながら腰を動かすハイプリーストの表情が、 無表情の中に僅かに艶の混じったプリーストの表情が皇騎士の絶望を加速させる。 床に組み伏せられホムンクルスに犯される皇騎士。 立たされたまま手すりに掴まりハイプリーストに犯されるプリースト。 状況や体勢こそ似ていたが、その行為に決定的な差がある事を皇騎士は直感的に理解していた。 何人もの相手に何度挿し込まれようとも、自分を犯しているのはホムンクルスであり、 注ぎ込まれる白濁は不快感を伴うのみで何の害も及ぼさない。 しかし今プリーストが挿し込まれているのは避妊具もつけられていない人間の陰茎であり、 その欲望が暴発すれば無防備なプリーストの胎内を精子が満たす事になる。 やがて訪れるであろうその悲劇を、自分は何も出来ぬまま見届けてしまうのか。 「お願い、やめて……犯すなら私を犯して……っ!!」 瞳に雫の浮かんだ皇騎士の懇願に構う事なく、ハイプリーストはプリーストを犯し続ける。 抽挿の衝撃で揺れる乳房の先端を弄び、ぴったりと密着した腰の動きを段々と速めていく。 「くく、そろそろ……まずは1発目だ」 聞こえよがしに宣言し、激しく腰を動かすハイプリースト。 その様子に表情を凍らせる皇騎士だったが、彼を止める術は存在しない。 「だめ、中は…お願い、外に――っくぅぅ!!」 無駄と知りつつも懇願を続けていた皇騎士の声が、突然打ち切られる。 ハイプリースト同様絶頂の近づいたホムンクルスが、皇騎士の背中に覆い被さりながら腰を叩きつけたのである。 「く、っあ!…マスター……っ!」 圧し掛かられる体重と下腹部に叩きつけられる衝撃に意識が薄れかける皇騎士だったが、 ぼやけた視線はなおもプリースト達の方向を見上げ続けている。 「…マスター……逃げて……」 やがてハイプリーストよりも早く絶頂を迎えたホムンクルスは、 腰を激しく動かし続けながら皇騎士の胎内に2度目の精を放つ。 「ひゃ、ぁ……」 膣壁に包み込まれた陰茎が暴れ、ドロドロになった膣内に新たな粘液を流し込む。 その感覚をはっきりと感じながら、皇騎士は擦れる視界の隅でハイプリーストの腰が止まっていない事を、 彼がまだプリーストの中で絶頂を迎えていない事を確認する。 意識は、そこで途絶えた。 ・ 「――……ぁ、え…?」 再び意識を取り戻した皇騎士が最初に見たのは、 精液と血液を吐き出しながら倒れているホムンクルスの姿だった。 続いて段上で力無く座り込むプリーストの姿。 外的要因によって破壊されている後方の扉。 そして、間近に存在する3つの影。 「ウィザード…さん?」 皇騎士の声に気付き、ウィザードは笑みを浮かべ振り返る。 「随分こっぴどくやられたみたいね」 「…すみません……私の力不足です」 「いいからいいから。しばらく休んでなさい?」 ウィザードの言葉に従わず上半身を起こそうとする皇騎士だったが、軋んだ間接が彼女の反抗を制する。 膣の周りにまみれていた白濁は商人によって拭われていたものの、 その全身は幾度も強要された性交によって疲弊しきっていた。 「――私のアジトへようこそ。君達もテストに協力してくれるのかな?」 不敵な表情でウィザード達を見下ろすハイプリースト。 プリーストへの陵辱は打ち切られたのか、はだけていた衣装は整えられている。 「まあ、そんなところね」 「気持ちは嬉しいのだが、許可もなしに立ち入るのは関心しないな」 「あら、許可なら彼が快く出してくれたわよ?」 言いながらウィザードが指差す方向には、気絶したままカートに乗せられたアルケミストの姿がある。 彼の様子に、ハイプリーストは苦笑しつつ溜息をついた。 「それにしても他愛のない相手ね、これじゃテストにならないわよ。 ……何なら、あんたがテストの相手になってくれてもいいんだけど?」 「まあ、そう焦らないでくれ――」 「悪いわね、あたしはせっかちなのよ!」 叫びながら広間と段上を結ぶ階段に向けて駆け出すウィザード。 そして階段の入口を塞ぐ鉄格子を砕く魔法を詠唱しようとする――が。 「――っ!?」 即座に、印を結んでいた右手を側面に振り払う。 ウィザードに向かって飛びかかっていたホムンクルスは、瞬時に噴き上がる業火の柱に弾き飛ばされた。 「なに、まだ生きてたの!?」 「ウィズっち違う、増援だよ!」 「増援!?」 距離を置いたウィザードが火柱の向こうに見たのは、広間の壁の一部が開き、 そこから何十体ものホムンクルスが一斉に向かってくる光景だった。 「テストはまだ終わっていないものでね。せいぜい頑張ってくれ」 言いながら踵を返し、座り込んでいるプリーストの元へと戻るハイプリースト。 彼に向けて放たれたウィザードの言葉は、雪崩のようなホムンクルス達の足音に掻き消された。 ・ 「く、このっ……離しなさいよっ!!」 再開した狂宴の最初の標的となったのはウィザードであった。 彼女の繰り出す防壁を突破したホムンクルス達が彼女を押し倒し、腕や身体を押さえつける。 すぐさま別のホムンクルスが両脚を開かせ、肥大した肉棒を彼女の股間にあてがった。 「――っ、ああぁぁ……っ!!」 衣服の裂ける乾いた音、そして絞り出すようなウィザードの悲鳴。 陰茎を突き立てたホムンクルスが、彼女の服の上から無理矢理挿入したのである。 服が突き破られるまでの圧迫感、そして前戯もせずに挿入された苦痛に身じろぎするウィザードだが、 彼女の力では押さえられ犯される身体をわずかに動かす事も叶わない。 「ウィズっち!!」 「…いいから、っ……あんたは早く二階へ……っうぅ……っ!」 背後で始まったウィザードへの陵辱、無防備な皇騎士に迫るホムンクルス。 そして自分にも襲い掛かる脅威に気を取られ、商人は一歩も前へ進む事ができない。 圧倒的な戦闘力でホムンクルスを屠り続けるアサシンクロスも、 際限なく襲い掛かるホムンクルスに阻まれ、階段を塞ぐ巨大な鉄格子を越えられない。 「…は、うぅ……っ!!」 ――やがて、もうひとつの悲鳴が響く。 カートを振り回しながら商人が見たのは、皇騎士の元に辿り付き性交を開始したホムンクルスの姿だった。 ウィザードと違い抵抗がないのをいいことに、ホムンクルス達は皇騎士の蜜壷だけでなく、 口内や菊座にも肉棒を挿し込み、精液を吐き出そうと前後させる。 「ロナさん……っ!!」 商人の悲痛な叫びが虚しく響く。 自分の力ではこの状況を打破できない。 アサシンクロスが敵陣を突破し敵マスターを殺しても、 ウィザード達を犯すホムンクルスは止められない。 他に方法は、方法は―― 「く、ぅ……ぁんっ!」 気付けば、状況が進行している。 ウィザードは依然抵抗を続けているが、激しく突かれる結合部からは白濁が飛び散り、 彼女の側に立っているホムンクルスは萎えかけの陰茎から精液をぽたぽたと垂らしている。 ――既に、二人目に犯され始めている。 「――んぐ、っ……むぅ……っ!」 皇騎士は僅かに抵抗を始めているが、彼女に挿し込むホムンクルス達を跳ね除けられず、 苦しそうな表情で口内に吐き出された精液を飲下する。 時々止まるホムンクルスの腰の動きが、皇騎士の体内で射精を行っている事を物語っていた。 「…やめて……」 カートを振り回す手を止め、力無く言葉を放つ。 隙をついたホムンクルスに腕を掴まれても、 繰り広げられる情景を前に目を泳がせたまま抵抗しようとしない。 「やめてよぉ……っ!!」 ホムンクルスに引き倒されるより早く、商人は自らの意思でその場に崩れ落ちた。 ・ 刹那。 「――創造主の名と罪の元に命ずる――サバス・ホムンクルス!!」 段上から響き渡る少女の咆哮。 次の瞬間、凄惨の一途を辿っていた状況が一変する。 ウィザードや皇騎士を犯していたホムンクルスが、 今まさに商人を犯そうとしたホムンクルスが、 アサシンクロスに襲い掛かっていたホムンクルスが。 全て、音もなく砂のように崩れ去ったのである。 商人が、ウィザードや皇騎士が、そしてハイプリーストまでもが驚愕の眼差しで咆哮の焦点に視線を向ける。 そこにはロザリーを胸の位置で握り締め、決意のこもった表情を真っ直ぐに向けたクリエイターの姿があった。 「…貴様……『安息』かぁっ!!」 状況を理解し、激昂するハイプリースト。 そして憤怒に満ちた表情のまま、ゆっくりとクリエイターの元へ歩み寄る。 「ふざけた真似を……裏切ったらどうなるか、覚悟はできているんだろうな?」 近づくハイプリーストの方を見ようとせず、クリエイターは階下のウィザード達に叫ぶ。 「……早く!早く来て!!」 クリエイターの覚悟に応える為、ウィザードは犯されていた身体をすぐに起こす。 商人も体勢を立て直し、既に鉄格子の側で機を伺っているアサシンクロスのもとへ駆け出した。 「ケミ子に手を出してみなさい…あんたの粗末なモノごと引き裂いてやるから!」 言い放ちながら印を結び、鉄格子に向けて振りかざすウィザード。 魔法陣の浮かんだ床が詠唱の完了と共に湾曲し、そびえ立つ鉄格子を強烈に突き上げる。 「くっ――」 クリエイターに迫ろうとしたハイプリーストは、響き渡る鈍い金属音に状況の切迫を自覚させられる。 もって5発。それで彼女達を阻む鉄格子は破壊される。 障壁がなくなった瞬間、逃げる間もなくあのアサシンクロスが自分の命を奪うだろう。 クリエイターに罰を与えるどころか、自分の保身に費やす時間もほとんど残されていない。 「っ……」 2度目の金属音。 最愛の姉であるプリーストは階下を結ぶ階段の側で座り込んでいる。 一番近いホールの出口は自分と彼女の中間点。 自分一人が脱出する時間は辛うじて残されているが、 彼女の元へ行き、自我のない彼女の手を引いて敵から逃げ切る可能性は―― 「――くそぉぉ――っ!!」 3度目の金属音と共にハイプリーストは全速力で走り出す。 ――出口でもプリーストの元でもなく、クリエイターのいる反対方向へ。 「ひっ……!」 迫るハイプリーストの姿に身体を強張らせるクリエイターだったが、 彼女に全く構う事なくハイプリーストは駆け抜ける。 そして4度目の金属音が響くのとほぼ同時に、彼は壁に取り付けられた赤いボタンの元に辿り付き、 ボタンを保護していたガラス板を叩き割りながら壁に押しこんだ。 5度目の金属音。 4度目の金属音から間髪いれずに、そしてそれまでの金属音よりも遥かに大きく響く轟音。 「――ぇ」 5度目の魔法を詠唱していたウィザードは、 バラバラになる鉄格子と共に吹き飛ぶアサシンクロスや商人の姿を目の当たりにする。 次に彼女が見たのは、 巨大な、針金状の物体だった。 |